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プログラム・ディレクター挨拶
Nahoko Nishizawa, Psy.D.
Nahoko Nishizawa, Psy.D.
臨床心理学研究科准教授 プログラム・ディレクター
カリフォルニア州認定クリニカル・サイコロジスト 北カリフォルニア在住

California School of Professional Psychologyアラメダ校臨床心理学博士課程修了
早稲田大学第一文学部日本文学科卒 University of Oregon心理学部卒
バークレイのNPO団体、スルー・ザ・ルッキング・グラスで、心理臨床スーパーバイザーとして、臨床心理学博士課程の実習生・研修生のトレーニングに携わる。2012年よりCSPP日本校内に西澤研究室を立ち上げ、アメリカ心理学会の虐待防止プログラム、ACT RSKを日本に導入するプロジェクトを開始し、「ACTすこやか子育て講座」として、CSPP修了生とともに活動を続ける。2002年より講師、2003年よりオンライン教育コーディネーター、2011年より准教授、2018年7月より現職

2018年で創立16周年を迎えたカリフォルニア臨床心理大学院日本校は、残念ながら現在校生を送りだして閉校する運びとなりました。開校時からこのプログラムで教育に携わってきた一人として、そしてカリフォルニア臨床心理大学院に誇りを感じている修了生として、閉校という過程に日本校プログラム・ディレクターとして関わることになったご縁を、厳粛に受け止めています。

50年近く前にカリフォルニア州において、当時まだごく一部の人のための高価なサービスであった心理療法を、必要とする多くの人々にもっと広く提供できるよう、「志」ある数人の臨床心理学者によって始められたのがCalifornia School of Professional Psychology(CSPP)です。全米でいち早く、臨床心理の実践的な教育を行う大学院を始めた「パイオニア」であり、米国の臨床心理の大学院教育のモデルとなってきました。この日本校も、心理支援をもっと広く活用できるようにという「志」から、まだ当時は日本国内で数が少なかった、実践力を養うことのできる臨床心理の修士課程として、CSPPのアメリカでのそれまでの経験を生かして始められました。

アメリカの臨床心理大学院を日本で始めるという日米どちらの社会でも初めてであった試みには、斎藤学・西尾和美両先生の並々ならぬ熱意と努力の10年近くの準備がありました。そして開校を実現してから現在に至るまで、日本国内で唯一のアメリカの臨床心理大学院として、二つの全く異なる社会・文化の間で、どちらかを押し付けるのではなく、日本の文化・社会に適切な心理の教育内容を適切な方法で提供していくためには、常に新しい課題や挑戦がありました。この大学院の運営と教育に関わってきた教職員の、労を惜しまぬ熱意があってこその、そして、そのような日本国内において特異ともいえる大学院を選び、真に自己に向き合い、心について学び、心理支援の力を磨いて貢献しようという「志」を持って学び続けてくれた、修了生・ 学生の熱意と努力があってこその、この16年であった、と思います。

今日では、社会からの様々な要請にこたえて、日本各地で優れた心理的支援を行っている修了生の話をたびたび耳にするようになっています。この学び舎で培った力を発揮し、同時に、「学び続ける大切さ」を理解した修了生たちが、今も自己研鑽に励み、「心の学びの種」を蒔いてくれていることを知ると、これから、CSPP日本校という枠を超えて、「自己」に、そして己と「異なる者」に、真に向き合うことの難しさと価値を知り、その試みと心の学びを続けていこうとする新しい仲間が増え続けることを感じ、頼もしく、楽しみにも感じます。

CSPP日本校のコミュニティは、異なる文化が協働で何かを生み出していくことの難しさと、そこから生まれるものの価値を、私達に教えてくれるものであり、それは、同質性の高い日本社会において、とても貴重なものとも言えると思います。
CSPP日本校の閉校は、本当に残念ではありますが、日米双方の社会の大きな変化の中で、この国際的・多文化的なコミュニティが形を変えていく、一つのステップでもあるのかもしれません。その貴重なプロセスを、最後のプログラム・ディレクターとして、在校生全員が修了するまで、大切に進めていきたいと思っています。

西澤奈穂子