CSPPをもっと知る > 学生・修了生からのメッセージ > > グループインタビュー > VOL.2
年間320時間の臨床実習も「スーパービジョン」によって生かされる。
2012年 大学&大学院.net (株)リクルート
 特集 編集部のスペシャルレポートより
「臨床家が教えることではじめて、臨床家を育てることができる」。
アライアント国際大学/カリフォルニア臨床心理大学院(CSPP: California School of Professional Psychology)東京サテライトキャンパスの掲げる、この教育理念が最も強く反映されているカリキュラムが3年次に行われる臨床実習だろう。CSPPが、「臨床家が育つ」と高く評価されている理由は、年間320時間にもおよぶ臨床実習もさることながら、実践している臨床家から週1時間以上必ず指導をあおぐ『スーパービジョン』の存在が大きい。
米国における臨床実習のシステムに詳しい同学アシスタント・プログラム・ディレクターの石井准教授と現在関西圏でKAP'sという修了生と在学生の会のメンバーとして活躍中の修了生3名に、『スーパービジョン』についてお話を伺った。
ケイ線
石井 美和子
石井 美和子

アシスタント・プログラム・ディレクター
カリフォルニア州認定マリッジ&ファミリー・セラピスト
詳しくはこちらから
ケイ線
大濱 和美さん(第1期生 2005年修了)
大濱 和美さん(第1期生 2005年修了)

臨床心理士、リプロセスカウンセラー/トレイナー
奈良ウィミンズ・カウンセリングルーム代表、
ちかまつクリニック・カウンセラー

「CSPPを知ったのは、ちょうど私がカウンセリングルームを開業したばかりで、セラピストとして自分の無力さを痛感していたころです。トラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)の心理療法についてきちんと学びたいと思い大学院を探していたときに、CSPPの日本での開学を知ったのです。決め手は教授陣の顔ぶれ。先生がたの臨床家としての豊富な経歴を見て、『ここしかない』と思いました」
岡部 道代さん(第5期生 2009年修了)
岡部 道代さん(第5期生 2009年修了)

ヒーリングスペース・リーブル代表

「勤めていた企業の同僚たちが、心身ともに調子を崩していく姿を目の当たりにしてメンタルヘルスの勉強を始めました。現在のキャリアのスタートは産業カウンセラーでしたが、クライアントの多くが機能不全家族で育っていることに気づき、本格的に学びなおす必要性を感じたのです。CSPPを選んだのは、「家族と子ども」に焦点をあてた臨床心理学や、学派にとらわれない統合的セラピーが学べることに魅力を感じたからです」
石原 雅子さん(第2期生 2006年修了)
石原 雅子さん(第2期生 2006年修了)

特定非営利活動法人 京都DARC
精神保健福祉士

「専業主婦のかたわら息子に学力をつけようと勉強を教えるうち、自宅で学習塾を開くようになりました。規模が大きくなると、心に傷をおった子どもさんもいることに気づきました。最初は"愛情をもって接すれば・・・"と思っていたのですが、信頼する知人から間違いを指摘されました。その知人に勧められたのが、本格的な心理学の勉強とCSPPだったのです。現在は、薬物依存症リハビリ施設で非常勤スタッフをしています」
ケイ線
CSPP3年間のカリキュラムの総決算「臨床実習」と「スーパービジョン」
CSPP一言で表現するなら「臨床家がつくった、臨床家を育てるための大学院」ということになるだろう。インターネットを活用したオンライン授業と月1回行われる東京での対面授業を中心に、臨床家になるために必要な実践に重点を置いたカリキュラムを履修していく。そして、その過程で身につけた理論や経験のすべてを総点検し、柔軟な応用力を結び付けていくカリキュラムが「臨床実習」である。「臨床実習」は3年次からスタートし、年間320時間、在住する地域の医療・教育・福祉・産業などさまざまなメンタルヘルス領域の施設で実習を行う。そして、この「臨床実習」をより効果的なものにするためにあるのが週1時間以上の「スーパービジョン」と呼ばれる熟練指導者(スーパーバイザー)による臨床指導だ。アメリカでは、臨床家を育成するためのこうした実習スタイルが定着しているが、そもそもこのような臨床家育成を大学院教育として最初につくりあげたのがCSPP本校なのだ。
私にとってのスーパービジョン
総合病院精神科で実習した大濱さんの場合
毎週、スーパービジョンのたびに"気づき"があった
大濱 和美さん(第1期生 2005年修了)
大濱さんの臨床実習先は、総合病院の精神科だった。カウンセラーとしてすでに経験を持っていたこともあり、すぐに多くのケースを担当させてもらえたという。多いときで、その数は13ケースにものぼり、もちろん、なかには難しい問題を抱えたクライアントも少なくなかった。それでも大濱さんは「周りから『たいへんでしょう?』とよく聞かれましたが、まったくつらいとは感じませんでした。その理由は、スーパービジョンがあったから」だという。このときのスーパーバイザーが江夏亮准教授。東京の江夏准教授とはスカイプを利用して指導を受けた。「私の場合、理想的な実習だったと思います。クライアントと面接して発生する不安や疑問は話を聞いていただいて解決でき、スーパービジョンをひとつ受けるたびに"気づき"がありました。江夏先生には、実習をスタートする前から、私が何を求めてこの実習に臨みたいかを伝えていたので、先生がうまく導いてくださったのだと思います。」
石井准教授からのコメント
まず、第一に大濱さんは東京キャンパスの第1期生なので、たいへんだったと思います。本学では、学生の自発性を重んじていることもあり、臨床実習の実習先は学生自身が決めて、交渉も自分で行います。もちろんそのフォローは学校が行いますが。先輩のいない大濱さんは、フロンティアとしての役割を立派に果たしてくれました。また、大濱さんに実習時の感想を聞くと「江夏先生のおかげで、楽だった」という答えが返ってきました。これは重要なことで、臨床実習における学生とスーパーバイザーの関係は、クライアントとセラピストの関係に近いところもあります。どんなに経験を積んだベテランのセラピストでも、日々のカウンセリングを通して疲弊します。本学では、在学中に個人セラピーを受けることを義務付けていますが、これもそのためです。大濱さんも自身が癒される経験を通して実践力を身につけることができたといえます。
乳児院で実習した岡部さんの場合
スーパーバイザーからの指摘で、実習するテーマを
明確にできた
岡部 道代さん(第5期生 2009年修了)
岡部さんの臨床実習先は、乳児院など子どもを対象にした施設だった。カウンセラーとしてすでに経験はあったものの、それまでのクライアントはすべて成人。乳児や子どもを相手にどうすればいいのか、最初は戸惑うばかりだったという。そんな岡部さんをサポートしたのがスーパーバイザーの石井准教授だった。「乳児院で私が担当や陪席したケースの多くが、ネグレクトや虐待が原因で"他者との関係性"を築けない子どもたちでした。経験のなかった分野だけに、石井先生の指導がなければどうなっていたことか・・・」と岡部さん。石井准教授の指導以降、岡部さんの臨床実習は、一貫して"関係性"に焦点を当てたものになったという。「実習を通して、子どもと治療的に関わる経験ができたことで、大人に対するカウンセリングにおいても、視野が広がったような気がします。また、この臨床実習を評価してくださる施設があって、修了後には未就学児に対するプレイセラピーを依頼されるようにもなりました」。
石井准教授からのコメント
岡部さんとのスーパービジョンでテーマにした"関係性"は重要なキーワードです。人間が社会生活を営むうえで、他者と健全な"関係性"を築く大切さと同様に、こうした"関係性"はクライアントとセラピストの間にも不可欠なものだからです。良好な"関係性"を構築するには、時間がかかります。臨床実習がひとつの施設に固定して、320時間もの長い時間を要するのは、クライアントと"関係性"を築くのにも時間がかかり、それができてはじめて、クライアントもそれまで隠していたような気持ちをもオープンにできるからです。つまり、そこからが真のセラピーの始まりともいえます。また、岡部さんは乳児院で初めて子どもに対する心理療法を実践しました。このように、メンタルヘルスの領域ですでに経験をもつ学生には、それまでと違った領域での実習先を勧めています。こうした体験のなかで気づくことこそ、セラピストとしての懐の深い力量につながっていくのです。
精神科クリニックで実習した石原さんの場合
セラピストである以上、生涯続くスーパービジョン
石原 雅子さん(第2期生 2006年修了)
石原さんの臨床実習先は、精神科のクリニックだった。「この実習先から学んだことは多い」と石原さんは言う。日本のメンタルヘルス領域では、臨床家育成の土壌はまだまだ発展途上だ。石原さんを受け入れてくれたクリニックでも、これまで心理カウンセラーの実習生を受け入れた実績はなかった。石原さんのスーパーバイザーはそのクリニックに勤務する臨床心理士がつとめてくれた。「若い女性の臨床心理士だったこともあり、ともに勉強するつもりでスーパービジョンを受けていました。日本のメンタルヘルス領域の現状について、良いところも、足りないところもスーパービジョンを通してわかっただけでも有意義でした」と話す。石原さんは、この臨床実習を機に精神保健分野に興味をもち、のちに精神保健福祉士の資格を取得し現在の活躍に至っている。「実習を通して、スーパーバイザーの存在の大きさと必要性も実感しました。実は、今、私は民間の薬物依存症リハビリ施設で精神保健福祉士として働いていて、女性専用の施設を作ろうと思って、準備を始めているところです。石井先生にスーパーバイザーになってもらって、いろいろ助言をいただいています」。
石井准教授からのコメント
スーパービジョンで学ぶのは、カウンセラーとしての"あり方"だと言ってもよいでしょう。何十冊、何百冊と本を読んで知識を増やしても、カウンセラーとしてクライアントの話に耳をすますことは容易ではありません。どんな理論を把握していても、それを一人ひとり違うケースに応用していく力は、実践を通してしか身につきませんし、それにはこの道の先を歩んでいるスーパーバイザーとのコンサルテ−ションが不可欠なのです。本学が、スーパーバイザーを実習先のメンタルヘルスの専門家にお願いするように勧めているのもそのためです。石原さんも実習先では苦労されたようですが、その経験は今の職場で生かされていると思います。実はセラピストという仕事はプロとなってからもスーパービジョンを受ける必要があることの自覚が大切です。もちろん私も受けています。
質の高い臨床実習や「スーパービジョン」の確立が日本のメンタルヘルスの裾野を広げる
アメリカがなぜ、メンタルヘルスの先進国といわれるのか、それはその裾野の広さにある。医療・教育・福祉・産業などさまざまな領域で、誰もが安価でメンタルヘルスのサービスを受けるとことができるのだ。こうしたことが実現できているのは、そもそも臨床家の数が多いこともあるが、実はそれ以上に臨床家の予備軍ともいえる実習生やインターンの存在がひじょうに大きい。実習生は実習先の臨床家(スーパーバイザー)の指導のもと、無報酬でカウンセリングを行い、その対価としてスーパーバイザーからの指導や貴重な臨床経験を得る。このシステムがメンタルヘルスの世界のインフラとして確立しているため、十分に臨床経験を積んだ新しい臨床家が次々と育ったいき、社会のすみずみにまで活躍の場を広げていく。
石井准教授は言う。「2002年にCSPP東京サテライトキャンパスが開校以来、メンタルヘルスの人材育成の土壌に臨床実習を定着させようと頑張ってきました。本学の学生・修了生たちの努力もあり、微力ではあってもそれは徐々に浸透してきていると思います。私たちを含め、メンタルヘルス領域で働く人間は、『次の世代は自分たちで育てる』という意識が必要です。臨床家が育つには、現場で場数を踏むしか方法がないのですから。例えばひとりの臨床家がスーパーバイザーとなり10人の学生を現場で指導する。学生はそれぞれ数名のクライアントを毎週受け持つ。これで数十名のクライアントが経済的に厳しい状況でも毎週カウンセリングを受けられます。その学生がやがてプロの臨床家となり、また10人の学生をスーパーバイズする。そうすれば、これだけでも100人の臨床家が育ちます。こうした連鎖が続けば、日本のメンタルヘルスは間違いなく変わるでしょう」。
(2012年「大学&大学院.net」㈱リクルート)
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