CSPPをもっと知る > 学生・修了生からのメッセージ > グループインタビュー > VOL.3
心理的アプローチの力を子育て支援にも。修了生チームが作り上げたアジア初の子育て支援ワークショップ。
2013年 大学&大学院.net (株)リクルート
 特集 編集部のスペシャルレポートより
横浜で子育てをテーマとした、ひとつの新しい試みが行われた。
「ACTすこやか子育て講座」。
参加型&体験型の子育てワークショップという副題がつけられたこの講座は、全米最大の心理学会であるアメリカ心理学会が開発し、世界で実績を上げている育児支援プログラムを、カリフォルニア臨床心理大学院の西澤奈穂子准教授を始めとした修了生のチームが、日本人向けにローカライズしたもの。
その取り組みには、「臨床家」を養成するCSPPの志が表れている。
親の感情に注目した新しいタイプの子育て講座
親の感情に注目した新しいタイプの子育て講座
米国では子どもへの虐待が大きな社会問題になっており、その解決策が多方面から模索されている。ACT(Adult and Children Together AgainstViolence)プログラムは、全米最大の心理学会であるアメリカ心理学会(American Psychological Association)が、心理学のさまざまな分野の研究結果や、効果が確認された心理セラピーの方法などを活用して作り上げたプログラムで、子育てにおいて「親の感情」に注目しているという特徴がある。
ここ日本でも、子育ての悩みを抱える親は非常に多く、虐待も増加傾向にある。「子育て講座」も数多く開催されているが、その多くは子どもに対する接し方がテーマ。しかし、本来はもっと親自身の感情というものに目を向けなければいけないと、CSPPの准教授である西澤奈穂子先生は言う。「親が問題を抱え込んで心理的に追い込まれてしまうことが、子どもに大きな影響を与えてしまうことが多いのです。その解決には、親が自分自身を振り返ることが役に立ちます。心理セラピーはそうした『自分を振り返る』ために有効な方法なのですが、日本ではまだ心理セラピーに抵抗がある人も多い上、子育てまっさかりの時に心理セラピーを始めるということも現実的ではありません。その点、講座形式になっているこのACTプログラムはとても有効的で、同じ悩みを抱える親同士が支援し合え、自分自身を振り返ることができる内容になっています」(西澤先生)。
修了生がアジア初のローカライズに成功
全世界で実施されているACTプログラムの、アジア初となる日本人向けローカライズに挑戦したのが、西澤研究室を中心とした修了生チーム。文化と社会の違いを考慮した翻訳の言葉選びから始まり、ワークショップの進め方といった細部にいたるまで丁寧に日本仕様に仕上げ、テスト運用などを経て実現させた。参加メンバーは、同時にACTプログラムのファシリテーター(運営者)としての養成講座を修了し、プログラムの実行資格も取得したという。全員を駆り立てているのは、心理セラピーの臨床家として、少しでも世の中に貢献したいという熱い想いだ。
修了生がアジア初のローカライズに成功
臨床家養成のために開学したCSPP
臨床家養成のために開学したCSPP
カリフォルニア臨床心理大学院(CSPP)は、1969年に米国で設立された大学院。それまで理論の勉強が先行していた心理セラピー教育の分野で、いち早く臨床家育成をテーマに掲げて開学した。「すぐれた臨床家が教えることで、はじめて臨床家が育つ」とした実践的なカリキュラムは、心理セラピーが社会の中で大きな役割を担う米国で高い評価を受け、その後全米の多くの大学院で採用されるほどになっている。この教育を日本で展開するために2002年に誕生したのが、CSPP東京サテライトキャンパスの臨床心理学研究科修士課程である。ローカライズを担当した修了生チームのメンバーも、この「臨床家」としての志を受け継いでいる。
心理セラピーのプロも通うCSPPの臨床家養成カリキュラム
CSPP東京サテライトキャンパスのカリキュラムは、フルタイムの通学制ではなく、オンライン授業と対面授業を組み合わせて行う。これは、日本での大学院構想が立ち上がった際に、CSPPのすぐれたカリキュラムを学びたいという声が、すでに臨床の現場で働いているプロたちから多くよせられたことによっている。「全国どこにいても学べる」「仕事をしながら就学できる」という2つのことを実現するために、日本での開講に合わせて新たに導入された教育システムなのだ。
さらに特徴的なのが、学びの集大成ともいえる320時間にもおよぶ「臨床実習」だ。大学院生たちは、ほぼ1年間にわたり在住地域のメンタルヘルス関連施設を実習先として実際の臨床に携わることになる。この臨床実習をより効果的なものにするために、毎回熟練指導者によるスーパービジョンが行われ、スクーリング時にはクラスでのディスカッションで実習を振り返る。こうした臨床実習は、臨床家養成が盛んな米国ではすでに定着しているスタイル。そもそもこのような臨床家育成の方法を、大学院教育として最初に作り上げたのがCSPPなのである。
心理セラピーのプロも通うCSPPの臨床家養成カリキュラム
心理的支援の幅を広げるより多くの人が使えるものに
「ますます複雑になっていく現代社会では、さまざまな形での心理的支援が果たす役割はとても大きいと思います」と西澤先生は言う。「心理的支援は、一対一の心理セラピーだけでなく、ACTプログラムのようなさまざまな形で地域に根ざした人生のサポートをすることも可能です。日本ではまだ、心理的支援の幅や提供されている地域が限られていると思いますが、できる限り多くの地域で支援を必要とする人にサポートが提供できるよう、さまざまな形の心理的支援を各地域に充実させていくことも、私たち臨床家の務めだと考えています」。
西澤  奈穂子
西澤 奈穂子
臨床心理学研究科准教授
オンライン教育コーディネーター
カリフォルニア州認定クリニカル・サイコロジスト
北カリフォルニア在住
詳しくはこちらから
ACTプログラムに参加したCSPPチームの人たち
友田 実岐さん (第5期生 2009年修了)
友田  実岐さん
発達障害児に対する療育活動に従事、西澤研究室内ACT事務局スタッフ
CSPPでの学びが私の仕事の基盤です
「仕事と両立させながら学ぶには、どうバランスを取るかがとても大切です。私はあえてパソコンを開かない日を作ったり、1つの課題を提出したらご褒美にほっと一息つく時間を作ったりすることで、自分に合ったバランスを見つけることができました。 臨床実習は、週1日8時間、約13カ月にわたってデイケアの精神科クリニックで実習させていただきました。精神科医、看護師、精神保健福祉士、心理職がチームで行うアプローチを体験し、他職種との連携の重要さを実感しました。また、数人のクライアントさんに対し、1セッション30分の個人セラピーを担当させていただいたことや、毎回約1時間行われるスーパービジョンでの非常に詳細なフィードバックで得たものは、臨床の現場でお子さんや保護者の方と接する際の、私の基盤となっています。」
佐久間 滋実さん (第5期生 2009年修了)
佐久間  滋実さん
児童相談所児童心理司・スクールカウンセラー、保健所発達相談員、西澤研究室内ACT事務局スタッフ
オンライン授業での言葉の選び方が自分自身を
見つめることにつながる
「児童虐待の相談が増加するに伴い、児童相談所での仕事内容は大きく変化しました。これまでの経験では捉えきれないケースが増えてきたという現実の中で、改めて家族や心の問題を勉強したいと思ったのが入学のきっかけです。CSPPは臨床を重視していることが大きな魅力でした。CSPPの授業では「自分自身を見つめる」ことの大切さを説かれます。それは掲示版のような機能を利用したオリジナルのオンライン講義にも表れていて、言葉だけでニュアンスを伝えることが難しいが故に、その表現を考えることが、自分自身を見つめることにつながったように思います。
13カ月にわたったクリニックでの実習期間はタフで厳しいものでしたが、相談者に接し、生の声を通して家族の関係性についての視点が得られたことはとても良い経験で、自分自身も成長したと実感しています。」
伊藤 晶子さん (第6期生 2010年修了)
伊藤  晶子さん
精神科クリニックカウンセラー、育児支援相談室カウンセラー、西澤研究室内ACT事務局オフィスマネージャー
自分の価値観も相手の価値観も大切にすることを教わった
「入学当時は2歳の子どもがいましたが、なんとか修了できたのは、オンライン講義と対面講義の組み合わせというスタイルのおかげです。オンライン講義の文字だけのコミュニケーションでは、自分の考えが誤解なく伝わっているかということを考えメッセージを発することになります。実はこの経験が現在の仕事で、クライアントの話を受け止める際にたいへん役立っています。また、CSPPでは自分の価値観を脇に置く「ノンジャッジメンタル」でいることの大切さと、「自分の価値観そのものに目を向ける」という、心理カウンセラーにとって最も大切なことを身につけられたと思います。この2つを、心を扱う仕事をするものとして忘れずにいたいと思います。」
坂本 奈美さん (第9期生 2013年修了)
坂本  奈美さん
カウンセリングルーム併設NPO法人申請中、西澤研究室内ACT事務局スタッフ
CSPPでのつながりが、私の人生に大きな影響を
与えてくれました
「子育てなどで感じていた自分の中のモヤモヤしたものを勉強しようと思ったのが入学のきっかけです。技術者として働いていた私は、プロになるつもりもなかったので、「臨床実習」に行くつもりはありませんでした。最初の2年間で、座学の知識だけでなく自己を見つめなおす経験ができていたので、入学当初の目的は達成されていました。しかし、1期上の先輩からの「とても得がたい経験になる」という強い薦めで履修したことが、その後の私の人生に大きな影響を与えてくれました。修了直前のサンフランシスコでの経験も加わり、心理的支援の重要性を実感できたのです。現在は同期の仲間とカウンセリングルーム併設NPO法人の立ち上げの準備中です。」
初田 美紀子さん (第8期生 2012年修了)
初田  美紀子さん
精神科クリニックでのカウンセリング、教育相談に従事、ACT第一期認定ファシリテーター
320時間の臨床実習が心理カウンセラーとしての
自分の原点
「結婚・出産を機に一度中断させたキャリアを、再びつなぐことが厳しいという現実にショックを受け、学び直すことで自分を振り返ろうとCSPPに入学しました。在学中に妊娠と出産も経験したので、子育てとの両立に悪戦苦闘した3年間でした。ただ、CSPPで学ぶことは自分自身に向き合うことでもあり、母親としての自分から、本来の自分に戻れる時間です。総じて苦労よりも楽しみのほうが大きかったと思います。 今は心理カウンセラーの仕事をしていますが、その基礎を作ってくれたのが320時間の臨床実習です。リスクを承知で現場に入らせていただき、スーパーバイザーの先生に指導と励ましを受けながらのカウンセリングでは、クライアントさんに対する関わり方やチャレンジしていく姿勢を身につけることができました。」
鶴丸 芳子さん (第9期生 2014年修了)
鶴丸  芳子さん
保育園看護師、カウンセリングルーム併設NPO法人申請中、 ACT第一期認定ファシリテーター
新幹線通学の価値があったCSPPでの学び
「入学直後に夫の仕事の関係で三重県に引っ越し。対面授業のための新幹線通学は、初めは気が重いものでしたが、移動時間をクラスメイトとの議論に使ったり、宿泊先となった友人宅でも議論を続けたりと、時間の使い方を工夫できるようになり、やがてとても充実したものになりました。
また、臨床実習では「知っている」ことと「できる」ことの違いを毎日痛感していましたが、働く先輩方を間近にし、自分がめざす「心理職」としての姿をイメージできたことはとても貴重な体験でした。現在は同期の仲間と、カウンセリングルームの立ち上げに向けて準備中です。」
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