CSPPをもっと知る > 学生・修了生からのメッセージ > > グループインタビュー > VOL.4
臨床心理の専門家として求められる理論と実践力を身に付けたスタッフが作り上げた子ども発達支援と家族支援の理想形
2013年 大学&大学院.net (株)リクルート
 特集 編集部のスペシャルレポートより
「臨床家が教えることではじめて、臨床家を育てることができる」。
こうした教育理念を掲げて2002年に日本で開講した、アライアント国際大学/カリフォルニア臨床心理大学院(CSPP: California School of Professional Psychology)・東京サテライトキャンパス。
その臨床心理学研究科を修了したスタッフが複数在籍し、カウンセリングを行っている社会福祉法人「麦の子会」が札幌市にある。
第1期生である総合施設長の北川さんと、修了生、在学生として活躍する5名のスタッフにお話を伺った。
北川聡子さん
北川 聡子 さん (第1期生 2005年修了)
社会福祉法人・麦の子会・総合施設長

カリフォルニア臨床心理大学院・東京サテライトキャンパス第1期生。総合施設長として麦の子会の運営を行いながら、社団法人北海道知的障害施設協会理事や財団法人日本知的障害者福祉協会・児童発達支援部会役員など、国や地域と連携し社会福祉の現場に長年携わる。スーパーバイザーとして現場の臨床指導も担当。
母親たちへの支援を、もっと深いところで
1983年、札幌市で「麦の子学園」として入園児5名からスタートした社会福祉法人「麦の子会」。現在では、発達に心配のある未就学児童に対して専門支援を行う「むぎのこ児童発達支援センター(通称・むぎのこ)」を中心に、専門クリニックや成人期支援施設までさまざまな事業体制を整え、それぞれの連携による多面的な支援に取り組んでいる。とりわけ特徴的なのが、子どもたちへの直接的なケアだけでなく、その家族に対する心理支援の仕組みも整備している点だ。こうした体制づくりの背景には、総合施設長である北川聡子さんとCSPPとの出会いがあった。

「13~4年前、まだ日本で開講される以前の話ですが、当時「むぎのこ」には現在のような心理支援の仕組みがありませんでした。お母さんたちへのカウンセリング、心の支援をもう一歩深いところでする必要があると考えていた頃、現在のCSPP東京サテライトキャンパスの名誉教授である西尾和美博士の「リプロセスワーク」というワークショップに参加したんです。“過去を知って今の自分に活かす”という考え方がとても素晴らしくて、先生を「むぎのこ」にお呼びしてワークショップを開いていただくなど、おつきあいが始まりました」。

西尾先生との出会いを通じ、アメリカの臨床心理学に興味を持った北川さんは、新設されたCSPPに第1期生として入学。施設長として働きながらの大学院生活は、学んだことがすぐに現場に活かせる喜びがあり、非常に意義深いものだったという。
臨床家が臨床家を育てる。ユニークかつ実践的なカリキュラム
カリフォルニア臨床心理大学院における教育は、「臨床家が臨床家を育てる」という明確な理念に基づいている。東京サテライトキャンパスのカリキュラムで最も特徴的なのは、フルタイムの通学制ではなく、オンラインの通信制授業と、対面で行うスクーリングを組み合わせていることだ。すでに臨床の現場で働いているプロから大学院開設を望む声が多かったので、全体の3分の1を占める通信制授業は、「社会人でも就学可能な大学院を」と、日本での開講に合わせて新たに導入されたシステムだ。

オンラインの授業で最もユニークなのは、「Moodle」という掲示板機能のeラーニングプラットフォームを使った学生同士のディスカッションを実施している点だ。学生一人ひとりが「Moodle」上に自分の意見に基づいたスレッドを立て、そこに別の学生が返信をつけるという繰り返しにより、オンライン上で積極的に意見交換が行われていく。さらに月1回のスクーリングで実際に顔を合わせることで、学生同士の関係性はさらに深まり、より活発な意見交換、情報交換が行われる。

さらに、東京サテライトキャンパスにおける学びの集大成と言えるのが、年間320時間にも及ぶ「臨床実習」だ。学生たちは、在住地域のメンタルヘルス関連施設を実習先として実際の臨床に携わることになる。そしてこの臨床実習をより効果的なものにするのが、熟練指導者によるスーパービジョンと、スクーリング時に行われるクラスでのディスカッションだ。臨床実習におけるさまざまな経験を学生同士が共有し教員の指導を受け、意見を交換することは、「チームで取り組む」という心理支援の理想的なあり方にも通じている。
臨床家が臨床家を育てる。ユニークかつ実践的なカリキュラム
臨床心理の先進国である米国式の教育も魅力
カリフォルニア臨床心理大学院での学びを現場で実践し、「子ども発達支援」と「家族の心理支援」という両輪を機能させるという理想的な仕組みを構築するに至った北川さんに、CSPPの魅力を改めて聞いてみた。
「まず、メンタルヘルスの世界にはさまざまな療法、スタイルが存在しますが、そうした流派にとらわれず、幅広く学べることが魅力です。それと、個人的にとても良かったのは、アメリカの教育を体験できたことです。例えば授業中に教授から『 質問は?』と聞かれても、日本の大学ではなかなか声が上がりませんよね。でもCSPPではとにかく質問すると、必ず『Good Question』と言ってくれる。学生もいつのまにか積極的になり、質問だけで授業が終わってしまうほどでした。子どもに対する考え方も、あれがダメ、これがダメと否定から入るのではなく、『こうすればもっとよくなる』という発想の違いがあります。自分自身、教育の現場に携わっている人間として、そこから学ぶことは大きかった」。
修了生の輪が、組織としての強さに
そんな北川さんの影響もあり、現在、むぎのこのスタッフにはカリフォルニア臨床心理大学院の修了生が複数在籍し、活躍している。
「心理支援は組織で取り組むのが理想なんです。一人でやっていると、カウンセラーも人間なので、クライアントに入り込んでしまったりして、線引きが難しくなってしまう。スタッフに同大学院の修了生が複数いると、カウンセラー同士が自分のことやケースの事を相談できるので、私たち自身も助かっているんです。そのことで、チームとしての対応や連携がよりスムーズになっているというのもありますね」。
こうした仕組みが整ったことで、CSPPで学んだスタッフだけでなく子どもたちと接する保育士さんや他のスタッフの意識も高まり、「何か気づけば心理相談部にフィードバックし共有する」という連携が取れるようになったという。また、通園する子どもの母親たちにとって、カウンセリングがより身近な「普通のこと」として受け入れられるようになったのも、大きな功績と言えるだろう。
鈴木久也 さん
鈴木 久也 さん (第4期生 2010年修了)

むぎのこ児童発達支援センター・児童発達支援管理責任者として、発達障害のある1歳~5歳の子どもたちの療育を担当。同じ男性として、思春期の男の子や父親のサポートも担当している。
スタッフが相互に連携することでより深いところでの支援が可能に
私が直接担当しているのは子どもたちですが、クラスにやってくるお母さんたちの様子を見て、「ちょっと最近元気がないなあ」といった変化を感じると、心理相談部に話を繋げるようにしています。そのような連携が可能になったのは、CSPPで学んだベースがあるからですね。私は大学時代に心理学を専攻していたんですが、日本の大学院に進んだ知人に話を聞くと、やはりどうしても理論が中心なので、現場に出てからが大変だったということです。
同じ勉強でもCSPPはより具体的、実践的です。カリフォルニア臨床心理大学院では320時間の臨床実習で、「自分はいざ面接になるとこんなに緊張するんだ」という気づきが得られましたし、そういう経験が今も現場で活きていますね。
中井由子 さん
中井 由子 さん (第7期生 2011年修了)

むぎのこ児童発達支援センター・心理相談部所属。発達障害のある子どもを持つ母親たちのグループカウンセリングや個別カウンセリング、むぎのこ発達クリニックにて心理検査も担当。同じように発達障害児を持つ親として、自身の経験を活かそうとこの世界へ。
家族のあり方を再認識したことがカウンセリングに活きている
カリフォルニア臨床心理大学院では、オンラインで学生同士がディスカッションを行うんですが、自分の考えを文章にしてアップするという作業を繰り返すうち、それまで以上に言葉の重さを認識することになりました。言葉を選んでコミュニケーションをすることの重要性は、今担当しているカウンセリングでも活かされていると感じますね。また、学んだ理論がカウンセリングの現場に結びついているという実感は常にあります。
例えば、家族をひとつのシステムとしてとらえる「家族システム論」は、むぎのこで実践している家族支援を考える上でとても重要ですし、「生涯発達心理学」は、子ども本人だけでなくその兄弟姉妹や親、祖父母にも、それぞれの世代の発達があるという視点を持たせてくれました。
古家敦子 さん
古家 敦子 さん (第8期生 2012年修了)

むぎのこ児童発達支援センター・心理相談部所属。発達障害のある子どもを持つ母親たちのグループカウンセリングや個別カウンセリングを担当。メキシコでの商社勤務を経ての転身組で、「むぎのこ」で初めての現場に携わりながら大学院へ通った。
現場で起きていることと授業内容が常にリンクする貴重な体験を重ねた
私の場合は、まったく知識がないままこの世界に飛び込んだというのがまずありました。大学院で学びながら、同時に現場の仕事を手探りでやる、という状態からスタートしたので、「あの時どういうことがクライアントに、そして自分に起きていたのだろう」ということについて、あとで授業を受けてからハッとする、ということがよくありました。あとはチームの一員として働くことの大切さを非常に感じています。
むぎのこは、保育士さんがいて、ドクターがいて、困ったケースがあれば園長に繋いでと、あくまでチームでの支援なんです。難しいケースがあった時、自分だけで抱えずに済んでいるというのは、CSPPの修了生が複数いることのメリットかもしれません。
佐藤直美 さん
佐藤 直美 さん (第8期生 2012年修了)

むぎのこ児童発達支援センター・心理相談部所属。発達障害のある子どもを持つ母親たちのグループカウンセリングや個別カウンセリングを担当。長年東京で産業カウンセラーとして働きながらカリフォルニア臨床心理大学院に通学。修了後、故郷である札幌に戻り、新たなキャリアを出発させた。
さまざまな分野で活躍する同期生とのネットワークが大きな財産に
個別カウンセリングでお母さんに話を聞いていると、お母さん自身のいろいろな悩みに出会うことが多いんです。子育ての苦労だけでなく、お母さん自身が問題を抱えている方もいて、もう少し深いところでの癒しが必要だなと感じることがあります。カウンセリングを通して「ああ、これは大学院で習った理論に通じるな」と振り返ることがほぼ毎日あります。改めて学んできたことが実践に生きていると感じます。
私はもともと産業界が長かったため、、教育界や医療関係などさまざまな分野の方と共に学び、仲間として情報交換できたことはとても有意義でした。ネットワークは今も続いているので、そのことも今の自分に活かされていると思います。
田中佳子 さん
田中 佳子 さん (2014年修了)

障害児者相談支援事業・相談室セーボネス所属。札幌市在住の障害を持つ人やその家族のカウンセリングを担当。自身も自閉症の子どもを持つ親として、むぎのこに通園しながら子育てをした経験を持つ。
多様な相談ケースに対応し得る理論と応用力を身に付けることができた
私がいる相談室には、精神・身体・知的と、障害の種別を超え、さらに年齢、家庭環境などさまざまな方がいらっしゃいます。例えば知的障害のある方が、さまざまな生きにくさの中で二次障害としてメンタルに影響が出てしまうケースもあるんです。多種多様なクライアントの状況があって当たり前という中で、CSPPで得た知識はとても役に立っていると感じます。
それと、「自分を知る」ということの大切さ。大学院の学生は合計30時間のカウンセリングを受けることになっているんですが、私自身が育った家庭のことや、人づきあいが苦手なこと、そして「そういう自分はどこから来ているのか?」ということを見つめ直す作業は、苦労もありましたが、得るものは大きかったですね。
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